導入 京都市左京区岩倉――この地名は、いまでは叡山電鉄の駅名や住宅地の印象で語られることが多い。だが、地名はしばしば、土地の表情よりも古い記憶を抱えている。川が削った谷、山裾に寄り添う集落、都の外縁に置かれた人びとの暮らし。そうした条件が重なる場所には、静かな風景の下に、長い時間をかけて堆積した歴史がある。岩倉もまた例外ではない。地名の響きは穏やかだが、その背後には、地形・信仰・隔離・葬送・戦乱といった、京都の周縁が負ってきた重さが横たわっている。…お気づきだろうか? 「岩」と「倉」という、ただ硬く、ただ ...