【マレーシアの怖い話】首と内臓だけで夜空を飛ぶ「ペナンガラン」の呪い

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【マレーシアの怖い話】首と内臓だけで夜空を飛ぶ「ペナンガラン」の呪い

マレー半島の夜空に潜む恐怖

観光地として人気の高いマレーシアですが、一歩路地裏や村落に入ると、観光ガイドには絶対に載らない、住人だけが知る土着の恐怖が息づいています。日本語の情報はほぼ皆無ですが、現地のマレー語フォーラムを読み解くと、ある特定の怪異に対する異常なまでの恐れが浮かび上がってきます。

それが、夜空を不気味に飛び交うという「ペナンガラン」の伝承です。熱帯の夜、木々の間を縫うように光るものが飛んでいたら、それは蛍ではなく、血に飢えた恐ろしい存在かもしれません。現地の人々が夜間に窓を固く閉ざす本当の理由が、この怪異には隠されています。

ペナンガランとは何か

ペナンガランは、東南アジアの伝承の中でも特に異質でグロテスクな姿を持つ妖怪です。昼間は普通の美しい女性として生活していますが、夜になるとその本性を現します。なんと、首から下の胴体を残し、首と内臓だけが分離して宙を舞うのです。

暗闇の中、長い髪を振り乱し、血まみれの胃や腸をぶら下げて飛ぶ姿は、想像するだけでも身の毛がよだちます。内臓は暗闇で不気味に発光するとも言われており、遠くから見ると火の玉のように見えるそうです。現地の怪談スレッドでは、「屋根の上でズルズルと内臓が擦れる音を聞いた」という生々しい証言が今も絶えません。

産婆が禁忌を破って変化する呪い

なぜ、このような恐ろしい姿になってしまったのでしょうか。伝承によると、ペナンガランの正体は、黒魔術に手を出した産婆(助産師)だと言われています。彼女たちは若さと美しさを保つため、あるいは強大な魔力を得るために、悪魔と恐ろしい契約を結びます。

しかし、その契約には「40日間、肉を食べてはいけない」などの厳しい禁忌が伴います。この禁忌を破ってしまったが最後、呪いによって夜な夜な首と内臓だけで飛び回る怪物へと変貌してしまうのです。自らの欲望のために人間を捨てた代償は、あまりにも残酷なものでした。

出産中の女性と赤子を狙う執念

ペナンガランが夜空を飛んで探しているのは、出産を控えた妊婦や、生まれたばかりの赤子です。彼女たちは血の匂いに異常なほど敏感で、床下や屋根の隙間から侵入し、見えない糸のような舌を伸ばして産婦の血をすすります。

血を吸われた女性は原因不明の病に冒され、最悪の場合は命を落としてしまいます。現地の古い村では、妊婦がいる家は特に警戒され、夜は決して一人にしてはいけないという掟が今も守られている地域があるほどです。近代化が進んだマレーシアの都市部でさえ、出産前後の女性が感じる得体の知れない不安の根底には、このペナンガランへの恐怖が刷り込まれているのかもしれません。

ジェルジュ(トゲのある葉)による防御

この恐ろしい怪異から身を守るため、マレーシアの人々は古くからある知恵を受け継いできました。それがジェルジュと呼ばれる、鋭いトゲを持つ植物の葉を使う方法です。妊婦のいる家の窓やドア、床下にこのトゲのある葉や枝を大量に敷き詰めます。

ペナンガランが家に侵入しようとすると、ぶら下がった内臓がこのトゲに絡まり、身動きが取れなくなると信じられているのです。夜明けまでに胴体に戻れなかったペナンガランは、太陽の光を浴びて滅びてしまいます。現代でも、地方の村を訪れると、家の周りに不自然なほどトゲのある植物が配置されていることがあり、それは単なる防犯ではなく、見えない恐怖への対策なのです。

筆者の考察:土着の恐怖が映し出すもの

この伝承を調べていく中で、筆者が特にゾッとしたのは、ペナンガランが「産婆」という命の誕生を助ける存在から生まれるという点です。本来なら最も頼りになるはずの存在が、最も恐ろしい脅威に反転する。海外の文献を突き合わせると、この不気味な共通点が東南アジアの他の国々にも見られることがわかります。

医療が未発達だった時代、出産は常に死と隣り合わせでした。その原因不明の悲劇を、人々はペナンガランという怪異の仕業にすることで、どうにか心の折り合いをつけていたのではないでしょうか。現地のフォーラムやSNSを読み込むと、今でも「夜中に屋根で音がした」と怯える声が見つかります。ペナンガランは単なる昔話ではなく、マレーシアの人々の心の奥底に今も巣食う、生きた恐怖なのです。

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