21世紀のメキシコで続く魔女狩り
メキシコと聞けば、陽気な音楽や美しいリゾート地を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、観光ガイドには絶対に載らない、住人だけが知る深い闇が今も存在しています。
それは、中世ヨーロッパの出来事だと思われがちな「魔女狩り」です。驚くべきことに、21世紀を迎えた現代のメキシコの一部地域では、呪いや魔術が日常に根付いており、魔女として告発された者が裁かれるという信じがたい風習が残っているのです。
ゲレロ州の孤立した村
舞台となるのは、メキシコ南西部に位置するゲレロ州の山奥にある孤立した集落です。この地域はインフラが十分に整っておらず、外部との交流も極端に少ないため、独自の文化や信仰が色濃く残されています。
スペイン語のローカルフォーラムを読み解くと、この村では近代的な法律よりも、古くから伝わる村の掟や長老たちの決定が絶対的な力を持っていることがわかります。警察や政府の介入すら拒むその閉鎖的な環境が、異様な風習を現代まで温存させているのです。
干ばつの原因を魔女に求める文化
この地域は深刻な水不足に悩まされることが多く、雨が降らない日が続くと作物が枯れ、村人たちの生活はたちまち困窮します。科学的な気象予報が届かないこの村では、干ばつは自然現象ではなく「誰かの呪い」であると解釈されます。
村の作物が枯れ、家畜が倒れ始めると、人々の間には疑心暗鬼が広がります。「あの老婆が夜中に呪文を唱えていた」「隣人が悪魔と契約して雨を止めたのだ」といった噂が囁かれ、やがて特定の人物が干ばつを引き起こした魔女として吊るし上げられるのです。
2019年の事件
日本語の情報はほぼ皆無ですが、現地のマイナーなニュースサイトを調べると、2019年にも恐ろしい事件が起きていたことが記録されています。数ヶ月にわたる干ばつに苦しんだ村で、一人の高齢女性が「雨を降らせない呪いをかけた」として告発されました。
彼女は村の広場に引きずり出され、自白を強要されたといいます。近代的な裁判など存在せず、怒り狂った群衆による私刑が執行されました。この事件は外部に漏れることなく処理されるところでしたが、偶然村を訪れていた人物の証言によって、わずかにその全貌が明らかになったのです。
村の掟と逃れられない恐怖
一度「魔女」の烙印を押されてしまえば、村の掟から逃れる術はありません。弁護士を呼ぶことも、無実を証明する科学的な証拠を提示することも不可能です。村人全員が敵に回り、呪いを解くための儀式という名目で残酷な制裁が加えられます。
さらに恐ろしいのは、告発の基準が極めて曖昧であることです。単に近隣トラブルで恨みを買った者や、身寄りのない孤独な老人がターゲットにされやすいという指摘もあります。閉鎖空間における集団心理の暴走が、呪いという形を借りて正当化されているのです。
筆者の考察:呪いよりも恐ろしいもの
海外の文献や現地のフォーラムを徹底的に突き合わせると、不気味な共通点が浮かび上がります。それは、極限状態に置かれた人間が、スケープゴートを求める心理の恐ろしさです。干ばつという死活問題に対して、誰かを「魔女」として排除することでしか心の平穏を保てない村人たちの姿は、ある意味で呪いそのものより恐ろしいと感じます。
この伝承を調べていく中で、筆者が特にゾッとしたのは、これが過去の歴史ではなく「今、この瞬間も起きているかもしれない現実」だという点です。私たちがスマートフォンで最新のニュースをチェックしている裏側で、ゲレロ州の深い森の奥では、今日も誰かが魔女として裁かれているのかもしれません。
