世界で最も多くの人を殺した女性の居城
東欧スロバキアの小高い丘の上に、かつて「血の伯爵夫人」と呼ばれた女性が住んでいた廃城があります。チャハティツェ城と呼ばれるその場所は、観光ガイドには絶対に載らない、住人だけが知る深い闇を抱えた心霊スポットです。
日本語の情報はほぼ皆無ですが、現地の歴史資料やスロバキア語のオカルトフォーラムを読み解くと、この城で起きた惨劇の生々しい記録が浮かび上がってきます。世界で最も多くの人を殺害した女性としてギネスブックにも記録されているバートリ・エルジェーベト。彼女の狂気は、数百年が経過した現在でもこの地に暗い影を落としているのです。
バートリ・エルジェーベトの残虐な犯行
16世紀末から17世紀初頭にかけて、バートリ・エルジェーベトは若さと美貌を保つためという狂気じみた理由で、数百人もの若い女性を拷問し、殺害したとされています。犠牲者の数は諸説ありますが、600人を超えるとも言われています。
彼女の犯行は、城の地下室や隠し部屋で密かに行われていました。鉄の処女(アイアン・メイデン)に似た拷問器具や、針が仕込まれた檻など、想像を絶する残酷な方法で少女たちの血を搾り取り、その血を浴びていたという伝説が残されています。血の伯爵夫人という異名は、決して比喩ではなく、文字通りの意味を持っていたのです。
チャハティツェ城の現在と不気味な静寂
現在のチャハティツェ城は、大部分が崩れ落ちた廃墟となっています。風光明媚なカルパティア山脈の風景とは裏腹に、城跡に足を踏み入れると、どこか重苦しく冷たい空気が漂っていると言われています。
一部の城壁や塔の残骸が残るのみですが、地下に続く階段や暗い地下室の入り口は今も存在しています。地元自治体によって一部は修復され、一般公開されている部分もありますが、立ち入り禁止となっている地下エリアには、未だに発掘されていない犠牲者の遺骨が眠っていると信じられています。
城跡で絶えない怪異報告
チャハティツェ城の周辺では、現在でも不可解な現象が数多く報告されています。現地のフォーラムを読み込むと、夜間に城跡を訪れた若者たちが体験した恐怖の証言が後を絶ちません。
最も多いのは、誰もいないはずの地下室から女性の悲鳴や泣き声が聞こえるというものです。また、写真に無数のオーブや苦痛に歪んだ顔のようなものが写り込む現象も頻発しています。ある地元の超常現象研究家は、夜の城跡で録音機器を回したところ、スロバキア語でもハンガリー語でもない、古い言語で助けを求める声が録音されたと主張しています。
地元住民が語る禁忌の証言
チャハティツェ村の古くからの住民たちは、この城跡に近づくことを極端に嫌います。彼らの間では、バートリの呪いが今も生きているという口伝が密かに受け継がれているのです。
「満月の夜には、城の窓があった場所から赤い光が漏れる」「城の近くで遊んでいた子供が、見知らぬ美しい貴婦人に手招きされた」といった不気味な話が、親から子へと語り継がれています。彼らにとってチャハティツェ城は、単なる歴史的建造物ではなく、触れてはならない絶対的な禁忌として存在しているのです。
筆者考察:狂気か、それとも陰謀か
この伝承を調べていく中で、筆者が特にゾッとしたのは、バートリ・エルジェーベトの残虐行為が長年にわたって隠蔽されていたという事実です。権力と財力を持った貴族の凶行は、周囲の人間を沈黙させ、多くの犠牲者を生み出し続けました。
海外の文献を突き合わせると、彼女の異常性は単なる狂気ではなく、当時の権力闘争や宗教的な対立が絡んだ陰謀であった可能性も指摘されています。しかし、城跡で今も囁かれる悲鳴や怪異の数々は、そこで確かに無数の命が理不尽に奪われたことを物語っています。チャハティツェ城の闇は、歴史の真実とともに、永遠に地下深くへと封じ込められているのかもしれません。