導入 京都市伏見区の稲荷山は、朱色の鳥居が連なる華やかな表参道の印象とは裏腹に、山そのものが長い時間の堆積でできた記憶の層である。伏見稲荷大社の境内山であり、古くから信仰の対象であると同時に、山裾から山腹にかけては人の往来、修験、奉納、石材の運搬、境界の感覚が何重にも折り重なってきた。とりわけ裏参道からおもかる石周辺にかけては、観光地としての明るさのすぐ下に、山の地形と信仰の歴史がそのまま影を落としている。お気づきだろうか。ここは単なる「縁試し」の名所ではない。石段、尾根、谷、社殿の背後に隠れているのは、 ...