導入 京都市東山区、八坂。法観寺の五重塔が立つこの一帯は、観光案内ではしばしば「祇園の奥座敷」や「古都の象徴」として語られる。だが、土地の名はいつも、今見えている顔だけを指してはいない。八坂という響きの背後には、神仏習合の時代に積み重なった信仰、山の斜面に刻まれた地形、そして都の外縁に押しやられた死と穢れの記憶が、薄い紙のように幾重にも折り重なっている。…お気づきだろうか? この一帯は、ただ「美しい古都」なのではない。都の華やぎのすぐ裏で、葬送、疫病、刑罰、被差別の歴史が沈殿してきた場所でもある。 八坂の ...