導入 京都市北区の「氷室」という地名は、ただ涼しげな響きを持つだけの土地ではない。名前の奥には、古代から都に冷気を運び、権力と季節をつないだ制度の記憶が沈んでいる。氷を貯えるための場所、すなわち氷室は、平安京の暮らしを支えた一方で、山の奥に切り分けられた労働、厳しい管理、そして都の繁栄の陰に隠れた人々の営みを今に残す。…お気づきだろうか? 「氷」という清らかな字面の下にあるのは、実は都へ供給するための緊張と犠牲の歴史である。 現在の京都市北区氷室は、賀茂川の北、山裾へ向かう静かな地域に連なる。観光地の華や ...