導入 京都市東山区の「粟田口」は、いま地図の上では神社や寺院、坂道、そして観光の流れのなかに静かに溶け込んでいる。しかし、この地名はただの方角名でも、雅な古都の装飾でもない。古代から中世にかけて、京都の東の入口として機能した要衝であり、都に出入りする人、物、死者、軍勢の気配が、長い時間をかけて折り重なった場所である。…お気づきだろうか? 「口」という字は、単なる入口を示すにとどまらない。そこは都の外と内、生者と死者、日常と非日常が出入りする境目でもあった。 粟田口の名は、平安京の東方、粟田郷の入口に由来す ...