京都市左京区 深泥池――水面の下に沈んだ地名の記憶 導入 京都市左京区の深泥池は、地図で見れば市街地のすぐそばにありながら、ひどく別の時間に属している。池を囲む低湿地は、夜になると音を吸い込み、風の気配だけがやけに近くなる。いまでは住宅地や道路に囲まれているが、もともとは広い湿地と池沼の残る場所だった。水は澄んで見えても、底は見えない。こうした土地に、人はしばしば名を与え、その名に過去の恐れや記憶を封じる。深泥池という地名もまた、ただの風景描写ではない。深い泥を抱えた池。あまりに率直で、だからこそ不穏だ。 ...