京都市左京区 岩倉――地名が沈めた記憶と、静かな谷に残る影 導入 京都市左京区の北東、比叡山系の裾がゆるやかに沈み込むあたりに、岩倉という地名はある。いまでは住宅地や学校、寺社が点在し、京都市街から見れば「静かな北の端」という印象が強い。だが、地名はしばしば、現在の景色よりも深い層を抱えている。岩倉という二文字にも、地形がそのまま名になっただけでは終わらない、古い時間の匂いがまとわりついている。 岩倉の「岩」は、文字どおりこの土地の基盤を成す岩盤や山裾の地形を思わせる。「倉」は、もともと「高くかこった場所 ...