第3回 味わい対談 野菜を食べて育てて健康・長寿!さくほに暮らす幸せ

撮影協力:町民キッチンヒロッシーナ

小須田:わたしね、今76歳なんですけど佐久総合病院の診察券を持っていないんです。病気らしい病気をしたことがない。退職してから大日向に来たんですが、田んぼとプルーン、畑をやっていて、もう閉校になってしまったけれど、東小の給食の野菜を8人のグループで全部提供していました。餅つきのもち米やきび、味噌なんかもね。学期ごとに「感謝祭」に呼んでもらって、感謝状をもらったりして、子供達と一緒に給食をいただく。それがうれしかったんですよ。最後の年は、20人の生徒に10人の職員でね。ずいぶん少なくなっちゃったけれど。田 邉:うわー、それはすごいですね。うちの娘たちも通わせたかったなぁ。
小須田:子供はやっぱり地域の宝だから。若い人や子供が増えるってことは、大事なんだよね。

たなべ診療所の待合室にはまきストーブや掘りごたつが置かれ、くつろげる雰囲気

たなべ診療所の待合室にはまきストーブや掘りごたつが置かれ、くつろげる雰囲気

田 邉:ぼくも、ここにたなべ診療所を開くとき、内科に加えて小児科を置くことで「佐久穂町に住もうかな」と思う若い夫婦が増えたら、町づくりのちょっとしたお手伝いになるんじゃないかと思いました。ぼくの実家は東京ですけれど、ぼくは佐久総合病院に就職してこちらに来て、佐久穂に住んで本当によかったと思っています。水道の水が冷たくておいしいし、夜はちゃんと暗くて静かだし、星座がわからないほど星がたくさん見えるし…。
小須田:本当に、抜井川の水はおいしいもの。わたしも、ジーバ共和国っていう農業体験のお世話係をしているんだけど、ここにやってきて、山や畑での楽しい体験を通じて、佐久穂町を知って移住してくれる人が増えたらいいと思うんです。今年は山村テラスの岩下さんと一緒にフランスの人が来て、わたしのプルーン畑でアコーデオンを演奏したり、一緒に飲んだり食べたりしてね。面白かったですよ。

田 邉:佐久穂町もそうですが、地方は人口当たりのインフラがすごく充実しているんです。保育園や病院、老人保健施設、図書館、何でもです。そして、自分や知り合いが育てた野菜や魚を食べられる。皆さん気づいていらっしゃるかどうかわからないですが、すごく豊かなことですよ。
小須田:母ちゃんには「食べきれないほど作らなくてもいいだに」って怒られてばっかりだけどなぁ。

田 邉:佐久穂町は畑仕事があるから、高齢者の方が健康なんですよね。会社を辞めても畑の社会があって、先輩・後輩もいて、いろんな人と話をして、適度に身体を動かして、やりがいもあって…。ぼくは医師として、高齢者の健康維持のためには野菜と魚を食べて、リズムある運動(歩くことで十分)を行うことと、仕事ややりがいを持つことが大切だと考えています。皆さん野菜は育てているし、直売所にもたくさん売っているし、運動や散歩をするところには事欠かないし、魚はこんなにおいしい信州サーモンがありますよね。信州サーモンはいろいろあるけれど、八千穂漁業さんのものがいちばんおいしい。お歳暮には信州サーモンやきたやつハムと黒澤酒造のお酒をセットで贈っています。

小須田:そうそう、贈った人みんながおいしいって言ってくれるもんね。
田 邉:佐久穂町にはみんなで創る「おいしい未来のふるさと」実行委員会があって、今の味を未来につなげていこうという取り組みをしていますよね。これも、地元再発見の一つだと思うんですが、食べ方を伝授することも大事だと思います。家庭ではもちろん、このヒロッシーナで野菜をこんなにおいしくおしゃれに生かす方法を知るのもいいですよね。
小須田:そうだねぇ。うちじゃ「また畑で採れたものばっかりかい」みたいになっちゃうからね~。
編集部:ぜひ、今度は奥様とご一緒にヒロッシーナへどうぞ!

「福祉と健康のつどい」。毎年10月に行われる佐久穂町の健康管理事業を象徴するイベント。広い会場に、福祉と健康の分野で活躍する団体の活動紹介や健康地域健康学習会の発表が展示される。ステージで行われる演劇は、オリジナルの脚本にもとづき長期の練習を経て熱演されるもので、もはや佐久穂町の伝統芸能の域に達している。旧八千穂村と故若月俊一先生率いる佐久総合病院により、昭和30年代から衛生環境の改善を目指し始まった活動は、その後「村ぐるみの健康管理」が目標に。若月先生の「予防は治療に勝る」の理念は「地域健康づくり員」や「保健推進員」といった住民ボランティアのイニシアティブによって引き継がれている。健康長寿国日本の起源に学ぼうと、毎年世界各地から視察団を迎える。

小須田:この町で引き継いでいきたい大切なもののひとつは、50年の歴史がある健康管理制度だね。集団ヘルススクリーニングもあるけれど、病気にならないようにするにはどう生活に気をつけたらいいのか、住民の中に様々な普及・啓蒙活動の担い手になる衛生指導員や健康づくり委員をおいて活動してきた。わたしも、ちょうど合併したころから委員をやっているけれど。
小須田:健康を守りながら医療費を下げるということは、地域にとってとても大事なことだと思うし、「この予防活動は世界に誇れるレベルであり、全国的に見ても男性がこの活動に携わるケースは少ないので、ぜひ続けてもらいたい」と言われるんだよ。時代に合わない部分は見直しをして、何とか続けられるといいんだけどね。
田 邉:全国的にも有名な、「長野モデル」のベースになる取り組みですよね。長野県はほかの自治体に比べて、医療費が抑制されていて、健康寿命が長いんです。健康保険制度は、みんながお金を出し合って病気になった人を支える仕組みです。病院での支払いは1割負担で助かりますが、あとの9割を誰かが負担していることを忘れてはいけないと思うんです。その上で医者として、患者さんに、そして、医療費を負担している人に対してどんな仕事をしていくべきなのか。それを考えると、具合が悪くなる前に引き返せるようにしていくことが大事だとぼくも思います。どうすれば病気になりやすいのか、若月先生は劇にして楽しく覚えてもらえるようにしていましたね。

小須田:そうです、そうです。初代衛生指導員の高見澤佳秀さんが脚本を書いていてね。(編集部注:書籍「いのちのいずみ」として出されています。佐久穂町図書館にもあります。)農村医療の組織は世界に広がっているんだから、元になっているここで大切に引き継いでいかないとね。
田 邉:そのためには、町の皆さんが、この取り組みが自分の親のために子のためにやっていく本当に価値のあることだと、再認識していけたらいいんでしょうね。自分たちのやってきたことを信じて、心から誇りを持って子々孫々に宝として伝えていく…。
実際、死亡診断書に病名ではなく「老衰」と書かれる方も多く、それは亡くなる間際まで健康だということなんです。病院ではなく自宅で息を引き取る方も多いですし。
小須田:そうだね。健康とは、個人の幸せだけではなくて、町の幸せ、国の幸せにもつながっていくんだ。オリンピックをどうこうするより、よっぽど大事なことだと思うがね。これからは、先生たちのような若い人たちに、そういうことを担っていってもらわないとね。
田 邉:まだ、引き継いでもらっていないので、これからもいろいろ教えてください。

対談を終えて

今回、小須田さんと田邉先生は初対面でしたが、地域の健康づくりへの思いに通じるところが大きく、お話が尽きませんでした。世代を超えて思いがつながっていくのを、ワクワクしながら聞かせていただきました。町民キッチンヒロッシーナの野菜たっぷり料理や、信州サーモンにも話の花が咲きました。お話もお料理も、たっぷりいただきました。ごちそうさまでした。(文責 赤堀公子)

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